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相生橋を渡る路面電車

小説「相生橋にて」

広島の被爆電車をテーマに小説を書いてみた

 昭和60年8月1日、相生橋にて被爆電車の試運転中に「事件」は起きた。路面電車の女性運転士「ミキ」が突如として昭和20年8月1日の世界に引きずり込まれてしまい、当時の女学生運転士「サキ子」が、ミキと入れ替わるように昭和60年の世界に迷い込んでしまった。
 元の時代に戻るべきか、その時代に留まるべきか・・・運命の8月6日が迫るなか、二人はそれぞれの選択を迫られる。被爆電車と云う「無言の語り部」をめぐって展開される人間模様を通して、歴史に翻弄される人間の苦悩と悲哀を生々しく描く。原爆犠牲者への鎮魂を込めた管理者渾身の作品が遂に完成であります。



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二度にわたる広島旅行を通して、徐々に構想(≒妄想)が膨らむ

 「広島電鉄路面電車まつり」を見に行った際、車庫で被爆電車を間近に見る機会を得た。展示されていた被爆電車のうち651号車は、爆心地から僅か数百メートルで被爆、窓ガラスも全て吹き飛び、車体は全焼した。其の車体を直して戦後も第一線で活躍していた事実を知り、拙者は大きな衝撃を受けたのである。しかも原爆投下当時、路面電車の運転士や車掌の多くが、まだ二十歳にも満たない女学生であった、と云う史実も衝撃的であった。広島の路面電車もまた、歴史の生き証人であることを強く意識する中で、「自分も何か書いてみたい」と云う欲求が芽生えた訳であります。



↑広電651号車〜拙書では「211号車」という名前で登場

 いろいろ妄想しているうちに、段々と妄想が膨らんで、或るストーリーが思い浮かんで来たのである。ちなみに「相生橋」とは、原爆投下目標とされた広島市中心部に架かる大きな橋で、其処から原爆ドームや平和公園を見渡せる。路面電車がひっきりなしに行き交う此の場所こそ、広島らしい風景の最たるもの、と云っていい。

相生橋〜広島を象徴する風景を小説の舞台に・・・



↑たまたま鉄道模型コンテストで見つけた作品

 画像のジオラマは、拙書の一場面を再現したかのようだ。まさに、電車があのような具合に橋を渡る際に事件は起きた、のである。数年前に行われた鉄道模型コンテストを見に行って、たまたま此の作品を見つけた。広島県の高校生が製作したものだ。是はもしかして優勝候補でしょう、と思っていたら、本当に優勝したらしいのだ。此の作品を見なかったら、ストーリーそのものを思いつく事が出来なかったかも知れない。

ミキは昭和20年の世界に吸い込まれていく

時空の彼方へ

相生橋にて〜被爆電車の試運転中に「事件」は起きた!

相生橋

 では、物語の舞台となった相生橋を実際に見ていくこととしよう。↑の画像は、路面電車の運転席から見た相生橋である。撮影に際しては、どうしても運転士のいない後方から撮影せざるを得ないが、運転士「ミキ」の目線に近い相生橋の光景と云えようか。路面電車の軌道と車道からなる見通しの良い橋だ。橋の真ん中からは原爆ドームも見渡すことが出来るのだ。こうやって眺めてみると、橋の真ん中が盛り上がっているので、さらに眺望が良いことが分かるだろう。

相生橋から見た原爆ドーム

 相生橋から原爆ドームは至近距離である。本当は相生橋こそ米軍の原爆投下目標であった。人類史に刻まれる重大事件の現場であることを強く意識せざるを得ない。

相生橋の構造は特殊である

相生橋の入口

 原爆ドーム電停側から見た相生橋の入口。歩道に花壇が設置され、とても整備が行き届いている。相生橋を渡る広島電鉄の路面電車は、広島駅-宮島口、広島駅-江波、西広島(己斐)-宇品、横川駅-広電本社前、の四系統が行き来する為、かなりの頻度で電車が行き交う。相生橋を渡る路面電車の姿は、広島の街を象徴する光景と云えようか。上部が丸い現在の親柱は四代目で新しい。橋は幾度となく改修されて今日に至っている。

相生橋

 相生橋の特徴は、橋の真ん中がT字の交差点になっていることだ。さらに、川も「元安川」「本川(旧太田川)」の分岐点にあたる。現在の橋は、昭和58年に開通した新しいものだが、原爆投下当時も橋はT字型の構造になっていた。上空から俯瞰して目立つので、原爆投下目標になったとされている。交差部分から南へ下ると(画像の右側から左側)、平和公園に入ることが出来る。

相生橋

 三代目親柱を再利用した相生橋の「橋銘板碑」は、原爆投下直後の光景が刻み込まれるなど、見る者の心を揺さぶるものである。

相生橋

 画像右側は初代の親柱、左側は旧相生橋碑である。初代の相生橋は、まだ木製であったそうだ。大昔は、電車用の橋と人車が通る橋が別々であり、T字型になってない時代もあった。激動の時代と共に、橋も姿形を大きく変えながら現在に至っているのだ。

 橋の周辺を巡り、相生橋の歴史、広島の歴史を感じ取ることが出来たところで、続いて拙書の舞台となった各地域の光景をつぶさに見て行くこととしよう。次ページ以降は、お読みいただいた方々向けの、いわゆるネタバレ的な内容を含むので、あらかじめご留意いただきたい。

→次ページ:相生橋や中島町を探索して・・・(いわゆる「ネタバレ注意」の内容を含みます)

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