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ドイツ行進曲

「プロイセンの栄光」

ドイツ帝国成立を高らかに祝う

 プロイセンの栄光〜かーっ、此のお題だけでも「如何にもだなぁー」と云う感じがする。重く固苦しいドイツ行進曲のイメージそのままだ。作曲者は、ドイツ行進曲を語る上で避けて通れない人物、ピーフケ(1815〜1884)である。ピーフケは、プロイセン軍の楽長の一人として、常にドイツ統一戦争と共にあった。デンマーク戦争におけるデュッペル要塞戦では、雨あられと降り注ぐ弾雨に身をさらしつつタクトを振り、ヨルク軍団行進曲を演奏して将兵の士気を鼓舞した。続く普墺戦争ではケーニッヒグレーツ近郊サドワの戦いで、有名な「ケーニッヒグレーツ」を作曲したのである。

 そしてとうとう、プロイセンが世界に名を轟かす瞬間がやってきた。普仏戦争において、ドイツ統一の邪魔をするフランスを見事討ち果たしたのである。此の戦争では、プロイセン軍を中核とするドイツ軍の進撃は目覚ましいのものがあった。開戦からわずか2か月でナポレオン3世の指揮するフランス軍を包囲、降伏に追い込む。無人の野を行く勢いのドイツ軍はパリを包囲、懲りずに戦いを続けるフランス人共にドイツ軍は砲弾の雨を降らせた。ドイツ軍の砲声轟くなか、ベルサイユ宮殿にてドイツ皇帝の即位式が行われたのである。時は1871年1月18日のことであった。


↑すっかり気落ちしたナポレオン三世とふんぞり返る我らがビスマルク

 ベルサイユ宮殿鏡の間は、ドイツ各邦の諸侯や将軍たちの歓声に包まれた。ドイツ統一の立役者ビスマルク首相もご満悦の様子である。プロイセンの栄光〜高らかなファンファーレが鳴り響く華やかな旋律は、まさに此の歴史的シーンをそのままイメージしたものだった。大ドイツ帝国万歳!

 湧きあがる歓声の渦中に、一人だけ浮かない顔をしている人物がいた。その人物とはなんと!皇帝に即位したヴィルヘルム1世本人だったのだ。
 彼は未だにプロイセン国の領主、と云う意識を捨てることができないでいた。それなのに、此処に控えるビスマルクがいきなり「ドイツ皇帝になれ」と云ってきたのである。是では、我がプロイセンが「ドイツ帝国」に吸収されて無くなるようなものではないか!せめて「ドイツラントの皇帝」ぐらいの名称にして欲しいのだが、ビスマルクは「もう時間ないですよ、みんな用意できてるんスから」だと。そんな理不尽な!我がプロイセンを墓の中に葬ったのも同然ではないか!今日は余の生涯において最も不幸な一日となるであろう!

 ピーフケが誇り高く描いた「プロイセンの栄光」とは何だったのだろう。いや、是がまさにドイツの抱える諸矛盾の最たるものと云えた。それでも彼らは前に進む。そしてその先に待っているのは栄光か?それとも破滅か?

おまけにもう一曲 「あーあの曲だー」 と誰もが言うでしょう


 普仏戦争大勝のドンチャン騒ぎに相応しい曲をもう一曲。フォイクト作曲の「見よ、勇者は帰る」〜是は、ドイツ皇帝になるのを内心嫌がっていたヴィルヘルム1世を、人の気も知らずに勝手に讃えた曲。ちなみに収録されてるCDは、海上自衛隊演奏「パリ入城行進曲:ドイツマーチ傑作集」から。パリ入城行進曲も超有名だが、普仏戦争ではなくナポレオン戦争時代のものである。恐らく、普仏戦争でも景気づけに演奏されたのだろう。フランス人が絶対に聴きたがらない曲に相違ない。


 フォイクトの「見よ、勇者は帰る」は、ヘンデルのメロディーを借用している。みんなが知ってる「優勝おめでとう!」「表彰状!」の曲だ。フォイクトは、ヴィルヘルム1世に向かって「戦勝おめでとう!」「帝冠です!」って云う感じのイメージで景気よく盛り上げている。昔気質なヴィルヘルム親父の心の内なんか知る由もない訳だが。

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海上自衛隊演奏CD-index



★ドイツ行進曲が似合う当管理者の自宅BARのネタです



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超番外編〜ドイツ民主共和国(東ドイツ)の行進曲を聴いてみた!



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