ドイツ行進曲
装甲艦ドイッチュラント
CDの解説書によると、作曲者は
エーリッヒ・シューマンと云う人で、国防省の課長や大学教授も兼任する「文官」だった人物。第三帝国(=ナチス)の時代、名曲と云われるほどの行進曲といえば、此の一曲のみだったと云う。
第三帝国時代、軍歌なり行進曲なり無数に作られたのだろうが、それでも傑作と云えるのはこの一曲だけだったとは厳しすぎる。何を基準に評価しているのかはよく分からないが、当時のドイツ海軍が、ナチ色が極めて希薄だったことが幸いしているのでは?と云う拙者の考えもまた偏っているだろうか。なにせ規則を無視して帝政時代の軍旗を誇らしげに掲げる隊もあったと云う。気分は完全に帝政モードなのである。
↑が帝政ドイツ軍旗。
自宅Bar「プロイセン」に掲揚されているものであります。確かに第三帝国旗よりも格段に芸術的で、帝政時代を懐かしむ古参の士官が好んで掲揚しようとした気持ちも分かる。
第一次世界大戦敗戦〜過酷な制裁を受けるドイツ海軍
行進曲の題財となった
装甲艦ドイッチュラントとは、そもそもどのような艦だったのか〜調べていくと非常に興味深いのだ。第一次世界大戦敗戦後、ベルサイユ条約によってドイツ軍は大幅な軍備縮小に迫られた。ドイツ海軍に課せられた制限もまた、過酷そのものだった。軍艦を新造する際も、基準排水量1万トン以内とせねばならなかったのだ。断っておくが、当時の日本海軍の巡洋艦ですら、排水量1万トンを軽く超えていたのである。ドイツには、せいぜい小型の巡洋艦ぐらいしか保有させないことを狙っていた。英仏などの連合国は、是でもうドイツ海軍を
キール軍港に永久に封じ込めておくことが出来るだろう!ガハハハハー!と高をくくっていたのだ。
しかし!こうした厳しい制約を課されて、かえってゲルマン職人魂を炸裂させるところがドイツ民族なのである。1万トン以内に収めればいいのであれば、1万トンの協力な戦艦を建造すればいいのである。ドイツ海軍があらゆる英知をかき集めて開発したのが、
「ドイッチュラント級装甲艦」であった。
装甲艦ドイッチュラント〜その恐るべき性能
装甲艦ドイッチュラントの登場は、まさに世界をアッ!と驚かせた。あまりの小ささに、イギリスの新聞記者が「ポケット戦艦」とあだ名したほどだが、艦は小さいながらも28センチ三連装砲2基を搭載し、巡洋艦以下の艦艇を圧倒する攻撃力を備えていた。小さくても戦艦は戦艦なのだ。
どうしても犠牲にしなければいけないのは防御力だった。このため、英仏の戦艦が正面から攻撃してきたらひとたまりも無いが、小回りの良さと優速を活かして逃げ切ることが出来た。しかも燃費のいいディーゼルエンジンを搭載し、長大な航続距離を誇った。長期間大西洋に潜んでは、高速でちょこちょこ走り回って、神出鬼没の通商破壊作戦を行うにふさわしい性能である。英仏の海軍当局が狼狽したのは云うまでもない。
しかしながら、当該艦はあくまで本土防衛のための抑止力の粋を出なかった。ドイツ海軍伝統の通商破壊作戦を実施することで敵の背後を攪乱し、敵を困らせることで時間稼ぎを行う役目だったのだ。後に起こる第二次世界大戦などと、全く想定していなかったのである。ところがドイツ海軍は、ナチ政権に対する政治的発言力が極めて小さく、ヒトラーの無理解も重なり、第二次世界大戦では圧倒的な連合軍を相手に悲惨な戦いを強いられることになる。装甲艦ドイッチュラントは、万が一撃沈された場合の国民の士気低下を恐れて、後に「リュッツォウ」と改名されている。もう負けることを前提にコトが進んでいるのだから、なんで戦争なんか始めたんだよって云いたくなるが。
大海原を悠然と航行する様子が目に浮かぶような名曲!
ます楽曲の調子だが、歩兵がてくてく行進するような雰囲気の曲ではない。観艦式で演奏しそうな雰囲気だし、出撃時にみんな岸壁に整列して「帽振れー!」って見送るような感じでもある。特にトリオの部分であるが、大海原を悠然と航行する艦の様子が目に見えるようだ。進路フタヒャークナナジュー度ヨーソロー!みたいな号令でも聴こえてきそうだ。重たいことで有名な
海上自衛隊の演奏だから、海軍らしい重量感に溢れている。そう、ドイツ行進曲の面白いところは、
「光景が目に浮かぶような」交響詩みたいな曲が多いのだ。あー、如何にも宮殿の中に王様が居てそう、あー、如何にも軍艦が浮かんでそう、みたいなね。これはお題目から来る先入観もあるのかも知れないが、交響曲や交響詩の作曲者を多数輩出した国だからこそのレベルの高さ、から来ているのは間違いないだろう。
偶然見つけた「プラモデル・戦艦ドイッチュラント」
自宅の近所に、本屋兼ホビーショップがある。いつも本を物色しているのだが、此の行進曲を聴いているうちに、
「ドイッチュラントなんて売ってるはず無いよな」と思いつつ、プラモデルのコーナーを覘いてみた。確かに艦船模型のコーナーがあった。大半は日本海軍の艦艇で、アメリカやイギリスがチラホラ。ドイツ海軍となると、さすがにマイナーだろうと思いきや、ドイッチュラントが本当に売っていたのである。しかも950円。
迷わず買った。買ったはいいが、拙者は艦船の模型は作ったことがない。衝動買いとは正にこのことだが。箱を開け、パーツを見て唖然とした。部品はこれだけ?と。戦艦だから艦橋もそれなりの規模があり、主砲やら備砲やら、にぎやかに並んでいるはずである。うんざりするほどのパーツがあるのかと思ったが。
箱の絵を改めて見て、「これがドイッチュラントの特徴なのかもしれない」と思った。重量制限をクリアするために、設計が限りなく簡素なのである。此のプラモデルは暫くそのままで保管することにした。「標本」として鑑賞するのも悪くないだろう。
次ページ:キールに敬礼!
海上自衛隊演奏CD-index
★ドイツ行進曲が似合う当管理者の自宅BARのネタです
・入店される方は↑こちらから!
超番外編〜ドイツ民主共和国(東ドイツ)の行進曲を聴いてみた!
・華麗なる?東独マーチ
・Im Gleichschritt Marsch!
↑興味ある方はこちらから〜超マニアックなCDでしたよ!
copyright (c) 2007 sagamitaro. All Rights Reserved.