HOME 原爆ドームのプラモを作る

原爆ドームのプラモデル

きっかけは鉄道模型レイアウトを作りたいと云う鉄ヲタ的入り方から始まった

 昔から阪急電車が好きなもんだから、阪急電車の鉄道模型レイアウトを作って愉しんでいたことがある。まぁ机の上でも楽しめるBトレインショーティーでジオラマを作った訳だが、此処で次なる創作を思い付いていた。前々から思い入れのあった広島である。
 広島と云えば広島電鉄の路面電車だ。札幌在住時代にお世話になった我が友より、広島で未だ現役で走り続けている大阪市電の写真をもらい、興味が湧いていた。しかもちょうど其の頃、被爆電車のことがニュースで話題となり、ニュースを見ながらあることが閃いたのだ。其れはエンドレスのレイアウト。原爆ドームを中心に、エンドレスの路面軌道を敷く。半分は現代の広島〜人やクルマが盛んに行き交い、原爆ドームは手入れされた植栽の中に記念碑として佇んでおり、観光客に囲まれる日々。其の反対側は被爆直後の広島〜焼け焦げた電車の残骸が残るが、周囲では懸命の復旧作業が行われている〜過去と現在の間をまるで時空を駆け抜けるかのように一両の路面電車が走り抜ける〜創造と云うより妄想に近かった。

さて、拙者は「原爆資料館」の売店からプラモデル版を購入する

 思い立ったら即行動だが、色々ネットで調べているとこんなことが分かった。どうやら原爆ドームのプラモデルが存在すると云うことだ。しかも売っている場所は原爆資料館東館、「財団法人:広島平和文化センターのミュージアムショップ」〜何だかとても納得した。当時、とても広島まで行く時間的余裕が無かったので、通信販売を利用した。まずは財団の総務課へ電話をすると、売店に繋いで呉れる。コード番号を言っても店員のお姐さんは分からないようなので、はっきり原爆ドームのプラモを下さい!と云った方がいい。在庫確認してもらい、OKなら現金書留を送るのだ。


 送られて来た製品が↑である。箱を開けたら、なるほど〜組立説明書、絵葉書、建物の部品がぎっしり詰まっていた。原爆ドームの構造が理解でき、資料的価値も大きいと云えよう。組立説明書を読むと、「土台は先に塗装しておきましょう。茶色っぽいグレーが良いでしょう。ラッカーで塗った後にエナメル系のつや消し黒を塗った後、ティッシュにエナメルシンナーをふくませて拭き取ると、凹んだ部分に黒色が残り、素晴らしい立体感が出て来ます」とある。「素晴らしい立体感」に悦に入る気にはなれないんだけど。




 塗装するかしないか、是は悩む。旧産業奨励館はカラフルな洋館なので、原爆ドームも案外複雑な色彩を有している。説明書には、「パッケージの写真等を参考にしながら、是非、自分なりの塗装を工夫してみてください」とある。此の「自分なりの工夫」が難しい。実はパッケージの「完成例」を見て、「ちょっと違うんじゃないの?」と思ってしまった。ほんの僅かな色彩なり光線の具合で「?」と思ってしまうところに、怖さがある。色々考えているうちに、負の世界遺産に興味本位の創作をすることにだんだん気が滅入ってしまった。此処でプラモデルは暫くお蔵入りになる。

急遽プラモデルを組み立てることに〜きっかけはホームページの編集上必要になったので


 園井恵子様〜苦学してタカラヅカトップスターに上り詰め、日本を代表する大女優として飛躍しかけた矢先、広島の原爆によって全ての夢を奪われた悲劇の女性〜世の人は園井のことを「未完の大女優」と評した。彼女のエピソードに感銘を受け、岩手川口の「園井恵子像」を見に行ったことがある。当時の赴任地であった札幌へ行く途中であった。
 園井恵子様の話をホームページにまとめたいと思ったが、やはり原爆ドームの「絵」が無いといけない。其処で急遽、あのプラモデルの出番となったのだ。然しながら、挿絵を造る目的で原爆ドームのプラモを作る展開に、何だか自虐的な気持ちになるが、此のプラモデルの用途が他に思い浮かばない。まさか床の間に飾っておく訳にいかんでしょう。飾り物じゃない、あくまで何かのメッセージを伝える存在だと思う、そう考えると何だか勝手に納得した。


 産業奨励館は、建物内部に吹き抜け空間があったことになる。是も初めて知ったことだ。極めてモダンな建物であったことが分かる。建物壱階は主に事務室、弐階と参階が商品陳列室となっていた。弐階と参階は、部屋の仕切りがほとんど無い大部屋。設計図とかで見ると、もしかして廊下がなくて、部屋自体が吹き抜け空間を中心に一周できるようになっている?のだろうか。相当変わった建物のようだ。



 最後の最後に、ドーム屋根を組み立てる。此処でさらに気付いたことは、此のドームは微妙な楕円形であることだ。本当に凝った建物である。説明によると、「ドーム部分は組立てが面倒な所です。あわてずに慎重に作業してください」とある。微妙なゆがみを再現するために、鉄骨の位置は一つずつ決められている。

まるで生き物のような原爆ドーム〜限りなくモノクロ処理し、被爆直後の惨状を表現してみた

原爆ドーム画像

 結局、塗装に「自分なりの工夫」が出来なかったので、モノクロ処理するしか無かったのだ。画像を見て、拙者の中のトラウマが反応して或る種の恐怖感を感じた。恐らく、小學時代に強制的に見させられた「はだしのゲン」のトラウマであろう。実は、あのトラウマがあったが故に、核兵器の問題を自分なりに考えることを抑止されていたことを今になって理解したのである。
 其の後、ホームページやらブログで広島の話題を書くときは、決まって此の画像を多用するようになる。何時まで経っても現地に足を運ぶ機会に恵まれず、悶々とした時代を過ごしたのだった。

→原爆ドーム〜いよいよ本物を見る

原爆ドームのプラモを作る

原爆ドームのプラモを作る

原爆ドーム〜いよいよ本物を見る

HOME



.
copyright (c) 2007 sagamitaro. All Rights Reserved.
inserted by FC2 system