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江戸東京たてもの園

まずは「デ・ラランデ邸」で優雅にお食事を

 友人が喫茶プロイセン(要は拙者が住む狭い長屋)に遊びにいらっしゃった。せっかくなので江戸東京たてもの園を案内する。此処は、建物のセンスの悪い江戸東京博物館の分館である。拙者お気に入りのスポットは、展示建物「デ・ラランデ邸」〜壱階は武蔵野茶房と云う喫茶になっている。建築物の構造上の制約からか、提供できるメニューは限定的だが、神戸や横濱の如く、入場料だけで法外な料金を徴収する洋館とは比較にならぬ程リーズナブルに、ゲミュートリッヒな時を過ごせるのだ。

デ・ラランデ邸

 内部も重厚な洋館そのまま。古めかしいピアノや暖炉のあるお部屋で昼食をいただく。給仕さんも大正時代風の洋装で、雰囲気を出している。カレーライスも何ともレトロ感がある。食べてみたら、まぁ普通のカレーなんだけど、古めかしい食器が普通のカレーをそれなりに盛り上げる。食事にムードは大切なのだ。

デ・ラランデ邸のカレーライス

デ・ラランデ邸

帝都不祥事件の痕跡

 江戸東京たてもの園内に、高橋是清邸が移築されている。そう云えば、此の年に放映された「大河ドラマ:いだてん」において、亡くなる直前に高橋是清役を演じたショーケンさんを思い出した。1928年アムステルダム五輪の渡航費を捻出するために、主人公の田畑政治(阿部サダヲ)が是清邸に単身突撃して直訴する場面があり、其処には異様な迫力を醸し出したショーケンの生前の姿が。
 田畑政治の無茶ぶりは見てて痛快だ。そう、時代を切り開いた先人達はみんな無茶をやった。そうせねば時代は開かないのだ。コンプライアンス云々と気取ったこと云ってる現代日本は、だから閉塞・衰退するのみである。

高橋是清邸

 そして此の高橋是清邸は、戦前暗黒史の舞台となった。帝都不祥事件、所謂二・二六事件である。反乱軍の将校達は、兵士から情報としてもたらされる農村の窮状を知り、何らかの改革が必要であることを理解していた。蔵相であった是清だって経済対策に辣腕を振るい、世界恐慌からの脱出を達成しており、目指すベクトルに大差は無かったはずだ。ただ、是清が軍事費削減に踏み切ったことが軍の怒りを買うことになる。是清暗殺は、統制派の連中にとっても願ったりであったのだろう。

高橋是清邸 高橋是清邸

 昭和11年2月26日午前5時〜中橋基明中尉及び中島莞爾少尉指揮の部隊が高橋邸を襲撃した。是清は弐階の部屋で拳銃で撃たれた上、軍刀でとどめを刺され即死した。凄惨な暗殺劇が繰り広げられた帝都不祥事件〜もちろん此の暴挙に昭和天皇は激怒、直ちに鎮圧されることとなる。反乱軍兵士の頭上に、飛行機がバラ撒いた投稿ビラがヒラヒラと舞い落ちて来た。「オ前達ノ父母兄弟ハ國賊トナルノデ皆泣イテヲルゾ」と云う文面が、何とも時代を感じさせる。ちなみに復刻版のビラを作ってPDFでダウンロードできるようにしたので、欲しい方はどうぞ。 →投降ビラのダウンロードはこちらから

高橋是清邸の一部は多磨霊園にあった?

東郷平八郎の墓 高橋是清の墓

 説明によると、高橋是清邸の主尾や玄関は多磨霊園に移築されて休憩所となった後、江戸東京たてもの園に移築されたそうだ。其の多磨霊園には高橋是清のお墓もある(写真右上)。場所は「名誉霊域」と呼ばれる国家功労者のお墓が集まるゾーン。山本五十六元帥や東郷平八郎元帥(写真左上)のお墓もあり、マイラーにとってはパラダイスのようなスポットだ。
 多磨霊園は、高橋是清だけでなく、事件で暗殺された渡邉教育総監や、反乱軍側の林八郎も埋葬されており、帝都不祥事件の被害者と加害者が同じ場所で眠っているのだ。何とも不思議と云うか、結局死んでしまえば仏さんは皆平等、そんな仏教的諦観がひしひしと胸に迫る。

多摩境停車場〜案外古い歴史を持つ

高橋是清邸

 多磨霊園は、西武多摩川線の沿線にあるのだが、此の路線もまたローカルな味わいがある。乗った電車は旧塗装の復刻版で、ラグビーワールドカップのラッピングが施されてあった。終点多摩境駅は、中央線との乗換駅なので賑わっているが、駅の歴史も古い。旧甲武鉄道時代の開業なのである。駅は高架化されて面白くも何ともないが、往時を偲ぶ大壁画は見応えがある。桜並木は有名な小金井桜で、国木田独歩が境停車場から散策に出掛けたことでも有名。まさに「武蔵野」の雰囲気を偲ぶスポットで、其の中心を成すのが小金井公園や江戸東京たてもの園なのであります。

多摩境駅 西武電車旧塗装

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