宝塚の風景    阪神間の世界    Home

.

小林一三先生の

記念館を訪ねて

阪急宝塚線池田駅から山の手へ歩くと


 阪急池田駅界隈は、昔から閑静な住宅街だ。そもそも、此の街の風景を作った人こそ、阪急電鉄の創業者である小林一三先生である。鉄道の利用者を増やす為に郊外に分譲住宅地を造成し、キャッシュで購入できない人には住宅ローンを利用してもらう、先生が考案した新たなビジネスモデルは、今では当たり前の光景になった。小林一三先生は、私鉄沿線と称される現代日本の新しい風景を作ったと云っても過言ではない。

小林一三記念館

小林一三記念館

 記念館に入ると、小林一三先生愛用の帽子とステッキが飾られていた。壁面も阪急マルーンに塗装され、旧社章がキラリと光る。やっぱり阪急のマークと云えば是でしょう!

もう一つの新しい景色


 ターミナル駅の改札口と直結した百貨店〜今や全国各地の主要駅で当たり前に見られる光景だが、其の第一号は阪急百貨店梅田本店である。もちろん、小林一三先生が「個人的に閃いたアイデア」なのだ。此の阪急百貨店、最上階に大食堂を配し、多くの買い物客で賑わった。昭和恐慌の時代、ライスだけ注文してウスターソースをかけて空腹を凌ごうとする若いサラリーマン達を小林先生は逆に歓迎し、「ライスのみのお客様歓迎します」の張り紙を掲示したエピソードは、「ソーライスの伝説」として語り継がれることになる。


 北摂地域に次々と広がった阪急の路線網〜宝塚西宮球場、箕面の滝、観光地もあって楽しそうな沿線風景である。鉄道経営は、沿線の不動産開発やリゾート開発と同時進行。沿線価値を向上させて乗客を「創造する」と云う理論である。昭和も末期になり、国鉄が民営化して誕生したJR各社のやったことを見れば分かるだろう。全部小林一三先生の真似だったと云うことを。


 そして一見関係ない業種に参入し、経営多角化を進めたのも小林先生の真骨頂。鉄道会社が少女歌劇団を作って社長自ら脚本を書いたりする(笑)。しまいに映画会社(東宝)まで作ってしまう訳ですよ。だから、貨物列車が走らないのに航空貨物まで扱ってしまうのも、不思議でも何でもないことであります。


 北摂を飛び越えて東京まで足跡を残した小林先生〜例えば日比谷の一角が「阪急村」みたいになっている訳だ。日比谷シャンテで「小林一三生誕150年」を記念した展示コーナーを見学した様子は→こちらから。

小林邸内は抑制の効いた雰囲気


 続いて小林邸内にお邪魔した。装飾を抑えた渋さの中にも高級感がある。阪急電車もまた同じである。


 もちろんシャンデリアぐらいは吊るしますよ。拙者だって木造二階建てアパートでもシャンデリアを吊るすぐらいだから。階段の雰囲気は、拙者が以前宿泊した宝塚ホテルを彷彿とさせる。


 渋い!としか云いようがないリビング。

茶室にも独特の思想が垣間見える


 庭園にもお邪魔した。庭園からは茶室も見ることができる。如何にも千利休みたいな茶室もあったが、邸宅の一部になっている茶室は、カフェのように椅子が並べられてあった。日本放送協會の「歴史秘話ヒストリー」で拝見したが、小難しい茶道の知識が無くとも気軽に来てもらえるように、と云う意図でデザインされたそうだ。此処がまた小林一三先生らしい。文化人の多くは派閥を作ったり、何かと閉鎖的になるようだが、先生は「庶民でもちょっと手の届く高級な文化」と云う、実は猛烈に難しいジャンルを懸命に開拓し続けた訳だ。


↑茶道に凝った人は大抵、こんな茶室作らないでしょ。

そして逸翁美術館も見学

 逸翁美術館の収蔵品は、株主優待券に印刷されていることがある。収蔵品の蘊蓄になると、さすがにレベルが高過ぎて拙者はギブアップだ。とにかく先生の視野の広さには脱帽だ。だからこそ、いろんな発想が生まれたのだろう。その根源は、幼い時から妄想大好き、小説書くのが好き、こう云うところなんか同志的共感を覚える。


 雲一つ無い晴天に加えて、今日は池田市のイベントの関係で小林一三記念館も逸翁美術館も入場無料と云う運の良さ。総ては小林先生に感謝するしか無い。改めて自分自身に活力を与えられたような気になった。


 池田から急行に乗車し、梅田へ到着!相変わらず9000系は優美な造形を誇っている。クルマに例えると「マジェスタ」「シーマ」と云ったところか。国鉄の客車は長らく「庶民は三等、ブルジョア階級以上は二等」のような階級制度があったが、阪急は普通の列車も二等車のような高級感を醸し出していた。このため、特等席のような存在は否定し続けていたのだが、時代の要請もあってとうとう有料座席を設けることになった。路線が短い為、有料座席と云っても料金はケーキ代かコーヒー代くらいであろう。「庶民でもちょっと手の届く高級な文化」を、また一つ創ってもらいたいものだ。

→次ページ:阪神淡路大震災そして苦難の復興

「阪神間」の世界

小林一三記念館を見学する

阪神淡路大震災そして苦難の復興

西宮北口の発展

Home



.
copyright (c) 2007 sagamitaro. All Rights Reserved.
inserted by FC2 system