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広島電鉄家政女学校

僅かに残る痕跡を辿る

平成28年〜オバマ大統領が広島を訪問〜感動的だった被爆者との対面

 平和記念資料館内に長蛇の列が出来ていた。其れは、オバマ大統領が折ったとされる折鶴が展示されていたからだ。大統領が子供たちにアドリブで手渡したとされる折鶴も、たちまち大人達に取り上げられて資料館行きとなってしまった。




 オバマ大統領の広島訪問は誠に感動的な出来事であった。平和公園で被爆者の代表と言葉を交わす大統領、被爆者代表の一人は、原水爆被害者団体協議会の代表委員の男性。テレビの字幕を見て、拙者はあることに気が付いた。前ページで触れた本「チンチン電車と女学生」の中で、広島電鉄家政女学校の女学生について、当時の思い出話を語っていたのだ。家政女学校の運転士や車掌の存在は、男子学生の間ですぐに話題になったと云う。
 当時のエピソードが何かと面白い。「憧れの女学生が運転してる電車が来るまで何本もやり過ごした」「彼女が運転している電車が何時頃来るのか、友達に調べさせた」〜現代ではストーカーに間違えられそうだが、当時の若者は純粋で不器用なだけだったのだろう。戦局が激しさを増す状況下においても、彼らには青春の日々があった。人間は如何なる時代でも人間であり続けることを思い知る、貴重なエピソードだったと思う。

平和記念資料館の展示から「広島電鉄家政女学校」の存在を想像すると

 さて、平和記念資料館の展示で時間を割いて見たのが被爆直後のジオラマだ。↓のジオラマは、京橋川に架かる御幸橋界隈である。ちなみに、ジオラマは後に撤去されてしまっている。


 「チンチン電車と女学生」によって明らかにされた、広島電鉄家政女学校の位置だが、画像の上の方にガスタンクが二基あるのが認められるが、其の南側に校舎や校庭があったらしい。被爆当時、女学生の中には「ガスタンクが事故で爆発した?」と思った人もいるらしい。みんな「ガス会社の事故」「自分の居るところが爆撃された」などと思い、まさか市の中心部に落ちた一発の爆弾だとは信じられなかった訳である。
 写真の左側に広島電鉄本社があり、電車が被災したまま放置されている場面も再現されていた。広電が運転を再開したのは8月9日であったが、もちろん此の界隈の復旧はもっと先の話である。

広島電鉄家政女学校の跡地は何だかよく分からない状況


 皆実町6丁目電停を降りて交差点から撮影してみた。偶然にも「グリーンムーヴァ―マックス」と広島電鉄バスのツーショットが奇跡的に撮れたのである。背景で分かるとおり、大きなショッピングセンターが建ち並んでいる。広島電鉄家政女学校の跡地は、恐らく店舗の敷地に埋もれているかも知れない。京橋川の堤防に出ると、川沿いの街並みがよく見える。学校の敷地に面していたであろう土手から、市の中心部方向を眺めたら、↓のような感じ。真新しいマンションが建ち並んでいる。


 周囲を探索したところ、何とガスタンクは現在も設置されていることが分かった。跡地を示すモノが何も無いが、位置関係を示す周囲のモノがあるだけでも、少しだけ「跡地」であることを感じることが出来る。残るは人の記憶と人による記録だけなのである。


「一番電車が走った」己斐〜西天満町


 では、昭和20年8月9日に復旧したのはどの地域か?展示を眺めているうちに見つけた、西広島(己斐)と思われる場所。真っすぐに伸びる山陽本線との接点が旧己斐電停である。ハチマキを締めた女学生が運転する「一番電車が走った」区間は、己斐電停から橋を渡って約1キロほどの西天満町までであったとされる。ジオラマでは、被災した電車が複数放置されているのが認められるなど、まことに生々しい被災状況である。復興の大きな第一歩が、此処から始まった訳だ。

★現在の西広島(己斐)電停はこんな様子




 現在の西広島(己斐)電停は、「KOI-PLACE」と名付けられた交流拠点となっており、芝生広場や飲食店、まったりと休憩できるベンチなどが整備されている。飲食店の屋上が展望広場となっていて、電停を発着する電車を眺めることも出来た。画像は、最新鋭の5200形と思われる。
 原爆による壊滅的被害、そして驚異的な復興、其の後の広島市の発展は路面電車が支えたと云っても過言ではない。そして、今や広島市は日本最大の路面電車王国となった。激動の歴史と多彩な車両、広電が「路面電車の博物館」と表現されるのも肯ける。本当に博物館級の車両を見ることが出来る機会があったので、次に「広島電鉄路面電車まつり」を見学した際の画像を見て行くとしよう。

→次ページ:広島電鉄路面電車まつり

広島の路面電車〜復興と発展を支える

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